木造と鉄骨が組み合わされた空間の補強。
教会や工場のような人が集まる空間は、部屋の中に柱がない開放的なスペースが必要となるので、木造で造られていても梁を鉄骨にして、大きな空間が造られていることがよくあります。
このような空間はとりわけ壁が少ないので、耐震診断をして、要所の補強が必要となりますが、せっかくの広いスペースを壁だらけにしてしまえば機能が失われてしまいます。
かといって機能を優先すれば建物の地震に対する抵抗力(耐力)が不足するという問題が起きます。
壁ではなく、柱と梁により耐力を確保するという手もありますが、木造ではとりわけコスト面の問題がでてくるので、設計段階においてしっかりと検討が必要です。
また梁が鉄骨である場合に、木造の柱とどのように補強していくか?
用途に対する荷重として、通常の住宅での人数程度の重さで考えてよいのか?
等も慎重に検討すべき問題です。
建築データ
築年数:約30年
床面積;137.32㎡
構造:1階木造(梁は鉄骨)、2階木造
改修内容:耐震補強工事および減築
地域;東京都立川市
ご要望と企画
・交通の激しい道に面しており、とくに2階の事務所の揺れが心配である。
・補助金を使用するにあたり、法律に抵触する部分は是正したい。
まず、この建物で問題となるのが、「揺れ」と言えます。
このような教会、店舗、集会場など壁の少ない大きな空間が必要な場合、どうしても揺れやすい構造となってしまいます。
基本的に壁により揺れや地震に対して抵抗するので、平面的にみても長手方向は壁が比較的多いのに対して、短手方向は壁が少ないことがわかります。(下図参照ください)
つまり揺れに対する抵抗力が長手方向と短手方向で極端に異なってしまい、その点でもバランスの悪くなっています。
改善策として以下のようにご提案いたしました。
建物の長手方向は、外部の壁を補強して強度をアップして、建物の短手方向は、建物の真ん中に大きな門型のフレームを二つ設置ような形にして強度を上げました。
そうなると当然、「増設された壁」が邪魔になりますが、活動の邪魔にならないよう、出幅を70センチ程度としてあります。
(耐力壁になる壁長さとして筋交の場合90センチ、合板などの場合は60センチ以上必要となります)
また、外観についても、補強や塗膜の劣化などあり、改修する必要があったので、すっきりとシンプルな状態になるよう、形や色を整理しました。
補強壁の設置について
上記の補強壁ですが、壁の下には必ず地震の力を地面に伝えるコンクリートの基礎が必要になります。
しかも、力を確実に伝えるために一部が出っ張ったような半島型ではなく他の基礎と一体となったような形が理想です。
この教会の場合、門型フレームの足元に基礎が必要になるので、「目」の形になるように基礎を新設しました。
1階の床が土間コンクリートを打ってあったので、カッターをいれて一度除去したうえで、基礎を新設しました。
その後のメンテナンス・・・
改修工事から約5年が経過して、メンテナンスを行いました。
車の通りが激しいため、絶えず微振動が来るところでもあるため、道路側の窓などの開口部に軽微なひび割れが見られました。
ひび割れの通常の補修の仕方として、ひび割れをVの字に切り込みを入れ、プライマーを塗布したうえでシーリングをします。
しかし、まだ工事をして約5年、かつひび割れも軽微なため、透明なシーリングをひび割れ部分に塗布することで対処しました。
完成写真および工事中写真
*画像をクリックすると原寸で表示します。